林京子さん死去 86歳、被爆体験を基に文学作品作家

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体内にガラスが残るという被爆者の女性から毎年、いまだに交流のある家内あて賀状が届きます。昔ご近所で交流があった人なんだとか。
年に一度の便りで「おばあちゃん、元気そう」と、互いにうなずきあっているのだろうか。
そんなガラス片のような証し一つも、文学の域に高めてきた作家、林京子さんの訃報をきのう聞いた。

林京子さんは長崎の動員先で被爆された被爆者の一人である。
生き残った級友の語りから生まれた一文が、短編の「空缶」の中に表現されている。
<四、五粍(ミリ)の、小さいガラス片は脂肪の核によって、まるく、真珠のように包み込まれていた、という>。
原爆投下のあの日を忘れず、当時の日増しに緊張の募る冷戦下の世情を憂えながら書き続けられた。

「原爆が過去の問題なら書かない」とも語った人でもある。
冷戦下の日本への核持ち込みを批判し、非核三原則の堅持を求めた評論が新聞紙面に残されている。
自らの体験を自分の言葉で伝えようと、晩年まで筋を通した信念の人でもあった。

オバマ元大統領の広島訪問を控えた折には、「来て見て何を感じるか、後は彼の人間性よ」と語られている。
林京子さんが言うところのヒトとは人類を指すのだろう。
ヒトと核の問題として、と重ねて問うてきた人だった。

不意の熱戦で絶命した教師が「なぜ」という驚きの表情のままだったと、短編「道」にある。
何も知らないまま殺された人たちのためにも、代弁者として使命感でペンを執ってきた。
いまだきな臭い世界情勢に憂いを残し、旅立つのはまだ早いと思っていたかもしれない。

【略歴】wikipedia引用
1930年8月28日、長崎県長崎市出身。誕生の翌年、父(三井物産社員)の勤務地・上海に移住。1945年に帰国し、長崎県立長崎高等女学校(現長崎県立長崎東中学校・高等学校、長崎県立長崎西高等学校)3年に編入学。
同年8月9日、市内大橋にある三菱兵器工場に学徒動員中、被爆した。爆心地に近かったが奇跡的に助かったと言われている。
長崎医科大学附属厚生女学部専科(現長崎大学医学部)中退。1963年被爆者手帳を受ける。

被爆からおよそ30年を経て、その体験をモチーフに書きつづった短編『祭りの場』(『群像』1975.6)で第18回群像新人文学賞、および第73回芥川賞。
実質文壇へ登場するきっかけとなった同作は芥川賞選考委員の井上靖らに激賞を受けるが、逆に安岡章太郎は「事実としての感動は重かったが、それが文学としての感動に繋がらなかった」と受賞に対して批判的であった。
受賞後に執筆した、十二の短編からなる連作『ギヤマン ビードロ』にて芸術選奨文部大臣新人賞受賞の内示を受けるが、「被爆者であるから国家の賞を受けられない」として辞退。
その後も自身の被爆体験や家庭における問題、上海での少女時代などをもとにした作品を展開していく。
1983年『上海』で女流文学賞、1984年『三界の家』で川端康成文学賞、1990年『やすらかに今はねむり給え』で谷崎潤一郎賞、2000年『長い時間をかけた人間の経験』で野間文芸賞、2006年『その全集に至る文学的功績』を評価され、2005年度朝日賞を受賞。
原爆を特権化する姿勢があるとして批判もあり、中上健次は「原爆ファシスト」と呼んだことがある。

【著書】
『祭りの場』講談社、1975 のち文庫
『ギヤマン ビードロ』講談社、1978 のち「祭りの場・ギヤマン ビードロ」文芸文庫
『ミッシェルの口紅』中央公論社、1980 のち文庫
『無きが如き』講談社、1981 のち文芸文庫
『自然を恋う』中央公論社、1981
『上海』中央公論社、1983 のち文庫、講談社文芸文庫(1983年女流文学賞)
『三界の家』新潮社、1984 のち文庫
『道』文藝春秋、1985
『谷間』講談社、1988 『谷間・再びルイへ。』講談社文芸文庫 2016
『ヴァージニアの青い空』中央公論社、1988 のち文庫
『ドッグウッドの花咲く町』影書房 1989
『輪舞』新潮社、1989
『やすらかに今はねむり給え』講談社、1991 のち文庫、文芸文庫(「道」併収)(1990年谷崎潤一郎賞)
『瞬間の記憶』新日本出版社 1992
『青春』新潮社、1994 のち文庫
『老いた子が老いた親をみる時代』講談社 1995
『樫の木のテーブル』中央公論社、1996
『おさきに』講談社 1996
『予定時間』講談社 1998
『長い時間をかけた人間の経験』講談社、2000 のち文芸文庫(2000年野間文芸賞)
『希望』講談社 2005 のち文芸文庫
『林京子全集』全8巻、日本図書センター、2005
共著
『被爆を生きて 作品と生涯を語る』島村輝聞き手 岩波ブックレット 2011

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